奇祭『尾鷲ヤーヤ祭り』見学会レポート

この記事は2018年2月に行われたヤーヤー祭りの我ら『おわせ暮らしサポートセンター』の先輩である谷津さんがレポートした記事です。HP移行により壊れていた部分を修正しました。

強く冷たい風の吹く2月の初め、尾鷲市に移住された方たちを対象にしたとある祭りの見学ツアーが開催されました。

その祭りとは『尾鷲ヤーヤ祭り』。ここ尾鷲市で開催される奇祭であり、江戸時代より続く、地域が誇る伝統行事。

この見学会は、祭りの雰囲気を肌で体感してもらい、移住者同士や地域住民との交流のきっかけになってほしい、町の人や文化、歴史を知り、より尾鷲を好きになってもらいたいという想いから実施しました。

見学会の様子を記事にまとめましたので、是非ご覧ください。

いよいよ見学会が始まる。

集合場所である『おわせ暮らしサポートセンター』は、築85年になる立派な古民家で、定住移住地域おこし協力隊の事務所がある他、様々な地域行事を行う住民たちの集会所としても活用されている。

「寒い中来ていただいてありがとうございます!」「中へどうぞ!」出迎えるのは、定住移住地域おこし協力隊の木島恵子さん、早川あやさんだ。

続々と移住者の方が集まってくる。

この日の参加者は20人。
ご夫婦、ご家族で参加された方もいる。こうした移住者同士が集まる機会は今までなく、お互い初めて顔を合わせる方も多い。

 

参加者がそろったところで、加藤千速尾鷲市長からの挨拶があった。

尾鷲市では、1000件以上の空き家があり問題となっているが、空き家バンクの活動による効果で、徐々に買い手や借り手のついた物件が増えている。移住者は、町が抱える問題解決を担う最良のパートナーだ。

「是非お祭りを楽しんでいってください」そう締めくくった言葉には、尾鷲に来てくれたことへの感謝がにじみ出ているようだ。

祭り見学の前に、お弁当を食べながら懇親会へ。
少し緊張気味だった参加者も、自己紹介や歓談を経てすっかり打ち解けた雰囲気に。

ここで、観光物産協会の室谷さんがヤーヤ祭りについての話をしてくれた。

「ヤーヤ祭りの行列は、基本的には大名行列。そのため、行列を横切ることは無礼にあたります」「”練り”とは、町民同士の押し合いのことです。昔はふんどし姿でしたが、現在では白装束でないと練りはできません」

祭りの歴史や成り立ちを「なるほど」「そうなんだ」と真剣な眼差しで聞き入る参加者たち。嬉しそうに顔を緩ませた室谷さんの説明にも自然と熱が入っていく。

ひとしきり祭りの知識をおさらいして、いよいよヤーヤ祭りの見学に向かう。

すっかり日が落ちた尾鷲の町は、身を切るような海風がとても冷たい。
しかし、リズミカルな太鼓の音が微かに響き、町は祭りの静かな熱気に包まれているようだ。

 

10分ほど歩いて、知古(じろこ)町に到着した。
ここが祭りの会場となる。

尾鷲観光物産協会の事務局長を務める塚原右己さんのご厚意で、空き家の1階・2階を観覧スペースとして開放していただくことに。「祭りを上から見物できるなんて。町民にしか味わえない特等席ですね」と参加者も喜んでいた。
中には、通路に建てられた”矢来(やらい)”によじ登って観覧する人も。

各町の法被や白装束を着た若者衆でいっぱいになる。

祭り開始の合図が響くと、「ちょうさじゃ!ちょうさじゃ!」という怒号のような掛け声をあげ、”ヤーヤの練り”と呼ばれる押し合いが始まった。

集団での激しい押し合いが何度も繰り広げられる様は、まさに”大人版のおしくらまんじゅう”だ。

「これほど凄まじい祭りだとは。驚きました」「祭りでこんなに興奮したのは初めてです」と参加者の方々も目を輝かせて見学していた。


「ヤーヤ」の名称は、戦国時代、武士の立ち合いの名乗りに由来するといわれている。それが、祭礼期間中、若者衆が毎夜各町を練る行事の通称となったそう。
尾鷲人の勇ましく男らしい気質は、今も脈々と受け継がれている。

ヤーヤの練りがひと段落し、尾鷲港へと移動する。
5分ほど歩いて到着すると、すでに若者衆や町人たちの人だかりができていた。

各町の高張提灯を掲げた町人たちが見守る中、裸の若者衆が次々と極寒の海に飛び込んでいく。

”垢離かき”と呼ばれ、神社参拝の前に、身を清めるために垢離をかく(海に飛び込む)のが習わしだ。
全裸で飛び込むのが全国的にも珍しく、メディアの取材やテレビ撮影で苦慮するのだそう。

垢離かきは、ヤーヤ祭りの開催期間である5日間にわたって、毎晩行われる。
尾鷲の人たちの祭りにかける情熱に、ただただ感服するばかりだ。

あっという間に3時間が過ぎ、見学会もいよいよ終わり。
この日は、そのまま現地解散となった。

この見学会を企画した木島さんは、移住者の方への定住支援について悩んでいたそう。

「空き家バンクを通して尾鷲に移住してくれた方に、もっと定住につながるサポートをしたくて。いざ田舎に住んでみると、理想通りにいかず都市部に戻ってしまう方もいます。来てくれた後のこともケアする必要があったんです」「移住者同士の交流は、今後も続けていきたい。自分たちの企画やイベントで『尾鷲に移住してよかった』と感じてくれたら嬉しいですね」と木島さん。

最後に、参加者に見学会の感想を聞いてみた。

夫婦で参加した津島啓城さんは「雰囲気ある古民家の2階から見学できるという貴重な機会でした。練りのぶつかり合いはもちろん、遠くで太鼓をたたく方々や、実況の方の表情など、お祭りを支える様々な役割の人の様子が見られて面白かった」「小さな子供連れでも安心して見られて嬉しい」と語った。

「活気ある祭り参加者を見て、同じ舞台にいるような感動をもらい楽しい一日でした。移住者同士のふれあいもできてよかった」と語ったのは、かつて移住体験住宅『みやか』で数ヶ月間のお試し移住をした杉浦悦雄さんだ。空き家バンクを通じて古民家を購入し、尾鷲に移住した。
「(見学会の後)連絡を取り合い、会うようにしています」と現在の状況を知らせてくれた。

イベントをきっかけに、新たな交流が生まれている。


厳しい寒さの中行われた見学会でしたが、多くの参加者に満足してもらえたようです。

定住移住地域おこし協力隊では、今後も移住後の暮らしを豊かにする魅力的なイベントやワークショップを企画していきます。
移住者はもちろん、移住希望者の方も大歓迎です。
興味がある方は、是非一度尾鷲に遊びに来てみてはいかがでしょうか。

隊員一同、心よりお待ちしております。

 

※この記事は、2月1日に定住移住地域おこし協力隊に着任した谷津 健太(やつ けんた)が、ヨソモノ目線で尾鷲の魅力をお伝えするために書かせていただきました。

 

(文/写真:谷津健太)

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