2016年11月8日

尾鷲のアラン・ドロン、誇りのもとに干物を作る - 有限会社北村商店

豊富な魚種が水揚げされる尾鷲港で代々続く干物商の一つ。
「尾鷲の地の魚」にこだわり、様々な魚種を積極的に展開。
定番商品から珍しい魚まで幅広く、誇りを持って全国へ提供している。

そんな丸清北村商店の三代目、”日本一チャラい魚屋” 北村豪様にお話を頂きました。

 

【お話を伺った方】

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有限会社北村商店
代表取締役 北村 豪様

-まずは貴社の概要について教えてください。

 具体的な創業年は定かではないけど、祖父の代から鮮魚屋の形で始まって、70年は経つ商店を営んでいます。平成7年頃に法人化して、もう20年は経ったところです。

現在、従業員がパートさん9名、役員が3名の計12名で工場を運営しています。担当は、生魚を扱う製造部門が6名、出荷事務が2名、出荷作業が3名。

私は仕入れ、製造、営業の三つを担っています。一人ではなかなか回りきらないので、全ての流れを把握し、責任を持ってその場をサポートしてくれる人が来てくれたら嬉しいなと。

-主な業務内容について教えてください。

干物製造の工程。サンマを包丁で華麗に開いていく

干物製造の工程。サンマを包丁で華麗に開いていく


 まず製造部門について。うちはスーパーにメインで卸しているので、年中同じ商品を安定供給することも必要になります。

一方で、定番のサンマやアジといった魚は、漁期が年に一回。なので、漁期に一年分を仕入れて、冷凍凍結して使用しています。

そのような形で仕入れた商品を、包丁で開いたり、塩漬けしてせいろに並べて干しています。

また、他の尾鷲の浜で揚がった魚も仕入れて使用しているので、冷凍物と水揚げ物で半々くらいの取り扱いですね。

うちの特色は、「尾鷲の漁師から、尾鷲の魚を仕入れて使う」事です。

他の干物屋だと、例えば尾鷲のアジは4月・5月は脂がのって美味しいけど、その他の時期は九州や日本海とかから脂が乗っているものを使う、という事があります。

でも、うちが作る干物には波がある。扱う魚は美味しい時期もあるし、そうでない時もある。

それでも、目の前の浜で、信頼できる知り合いの漁師が尾鷲の海で獲った魚を使いたいんです。

「本当に美味しい干物だけを食べたい」という事だったら、「よそで買うて」って感じ(笑)。

でも、尾鷲が好きだったら、うちから買って欲しいと思います。

 また、干しあがった魚は凍結保存しますが、大体一週間分程度の干物を製造して、出荷担当が凍った状態で商品を箱詰めし、お客様へ発送します。

スーパーがメインのお客様なので、発注は毎日あります。店舗ごとに注文が送られてきて、それに応じて箱詰め、出荷をします。

 自分は、社員にはふらふらしてると思われてるけど(笑)、やはり忙しいです。現場の人らは「今日の仕事」で忙しいけど、俺は来月、再来月、半年後とか、先の事に追われてる。

とは言っても、先には何が水揚げされるかも分からないし、色んな想像をしています。

例えば、来月に商談を控えている時に「どれだけ商品が箱に入るか」を考えたりしますが、その時に「あれ出して、これ出して」と現場に言うといらっとされる(笑)。

けど、それをやらんと、来月の日々こなしていく業務ができなくなる。だから、自分が製造ラインに入る事もありますが、皆ができる事は皆に任せる。

で、自分は静かな環境で、未来の仕事を考えるようにしています。じゃないと、どっちつかずになって考えが追い付かないので。

-貴社の今後の展望について教えてください。

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出荷ライン



 今後の展望は、色々道があってまだ迷っています。今は時代の流れも速くなって、人のニーズもドンドン変わるし、なかなか10年先は読めない。

たくさん商品を売ってくれる量販店への卸も切れない一方で、魚に対する想いやこだわりを捨てきれん所もあり…

部署を3つくらいに分けて、量販店向け、直売、特殊な販路向け…といった形でやれたら良いなとは思っています。

また、尾鷲の魚と合わせて、尾鷲の文化を発信しつつ、かつ押し付けもしない形で商売をしなければとも思います。

従来にないアレンジができる干物とか、商品や販売の仕方も変えていかないと。

今、漁業も衰退していて、日本人が魚離れしているとか言われてるけど、実際には離れていない人の方が多いし、日本人が魚を食べなくなる事は絶対にない。

要はやり方なんです。魚を出したったら、人は食う。

昔の人は「買ってきて、調理して食べる」事をやってきたけど、今の人はそうしないだけ。魚の味に対する嗜好が変わった訳ではないです。

日曜日の街の回転寿司なんて、長蛇の列やん。決して魚の味が嫌われている訳じゃない。

一方で、スーパーの刺身の方がネタは良いはずなのに、どこも生鮮コーナーは苦戦してる。

だから、どうやって魚を人の口に運ばせるのか、アイディアを出していくべきですね。

-今後の採用に関して、「求める人材」はどのような人でしょうか。

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 さっき話した通り、仕入から製造、出荷までの全ての流れを把握して、責任を持ってサポートしてくれる人が欲しいです。

自分一人で物事を考えていると、どうしても自分だけの考えに留まってしまうので。

仕入れや製造では、やはり「北村商店の色」が大事だから、そこは俺が見ていく。

で、北村商店の干物作りへの想いや、街の漁師の想い、尾鷲の食文化とかを踏まえて、今風に商品を外へ出せるアイディアが欲しい。

例えば、俺はスーパーに売り込みに行く時には、パートのおばちゃんと仲良くなる。職場にチョコレートを持って行ったりとかして。

というのも、仕入担当の人は異動で変わるけど、おばちゃんは長く職場にいるんです。

だから、仲良くなると、若いマネージャーが新しく来た時、彼はパートのおばちゃんらの言う事を聞かないといけなくなる(笑)。

女性はどれだけ歳を取っても女。80歳を越えたおばあちゃんも、バラの花を贈るとポッとするんさ。

昔はよくナンパもしよったけど、女の子を引っかける話術は、営業にも通じるし、人をうまくまとめる能力になる。

だから、俺はチャラ男が世界を救うと思うんさ。それは自分の哲学。

「日本一うまい魚屋」は良くいるけど、「日本一チャラい魚屋」なら目指せるかも知れんし(笑)。

 商品を売る時にも、「尾鷲の魚は美味いですよ」なんて月並みなトークをするんじゃなくて。

もっと柔軟に、営業先の課題や弱点を見つけて、解決する提案で売り込める。

そういう事を具現化できる、ハイテクな頭を持った人材を求めます。

 あと、日本全国、銭儲けだけじゃあ魚屋はできん。

魚を扱う特性上、仕入とかのリスクが大きいし、言ってしまえばパチプロみたいなもんです。

でも、焼き魚は和食のメインを張る食材だし、干物と言えば朝飯の代名詞。

魚の獲り方、流通させる仕組み、加工する技術、調理の技術…とか、そういう所に仕事する意味を見出す必要がある。

「日本の文化を守ってる」という充実感を持てるような人に来て欲しいし、俺もそれがあるから頑張っていけてます。

銀座とか外の街の一流レストランで「尾鷲の魚屋です」と言うと、料理人は色んな事を聞いてくる。

それだけ料理人やプロの世界で尾鷲は一目置かれている街で、その世界に俺がいるんだ、という充実感があります。

-最後に、貴社で働く上でのアピールポイントは何でしょうか。

加工場外観

加工場外観



 魚屋は、もっと「夢を見させる」べきだと思っています。華麗できらびやかってイメージがあれば、もっと魚屋になりたい人が増えるはず。

今は魚屋が少なくなったけど、なぜ減ったのかと考えたら、俺が小~中学校の頃にやっていた魚屋の事を思い出して。

その魚屋のおじさんは、真冬に凍えながら店先で魚をさばきよった。その辛いイメージで、子供らは魚屋が嫌になった、と思ってます。

テレビでも、「漁師はきつい」とか「魚価が下がった」とか悪い事ばっかり言うやん。そしたら、誰も魚屋になりたいとは思わん。

だから、魚屋はもっと格好良い事を言うべき。

俺は小学生が見学に来た時には、楽しく格好良く振る舞う。

サッカーでも、カズは長く現役を続けて物凄く努力しているけど、一切辛いところを見せない。

それがとても大事。第一印象もそうだけど、憧れを持たせるべきなんです。魚屋はド派手なスポーツカーに乗るべきですよ。

尾鷲の先輩らがしっかり仕事をしてきたから、今でも若造の俺が東京でも顔が利くし、感謝もされる。それを次の世代にも継いで行きたいです。

 この前の伊勢志摩サミットの時には、干物が一気に大量にはけるから、うちは皆で三日も四日も、ほぼ寝ずに働いていました。

「尾鷲の魚が全国に出る!」ちゅうことで、50~60代のおばちゃんが、家事も炊事もある中で頑張ってくれて。

毎日顔が変わっていくほどの忙しさでも、そういう誇りを持っているからこそついてきてくれた。

本当に凄いことだと思うし、ありがたいことです。

尾鷲や尾鷲の魚、日本の文化を、自分達が支える。そういう誇りとプライドを持って仕事をしていく。

で、そうしてうちの商品や尾鷲の文化、魅力を、新しい形で外部に出していける。

そんな人と、ぜひ一緒に働きたいと思います。

【会社概要】

社名 有限会社北村商店(丸清北村商店)
創立 平成7年4月(法人設立日)
代表者 北村 豪
所在地 〒519-3613 三重県尾鷲市瀬木山町3-31
電話番号 TEL.0597-22-6667 FAX.0597-22-9525
主要取引先 マックスバリュ中部、尾鷲物産、マル和水産(四日市)、大水(大阪本場)他
ウェブサイト http://marusei-kitamura.com/

 

※掲載の情報は2016年11月時点のものです。