2018年9月2日

新鮮な地魚と、燻製の香りに魅かれて – マルスイ海産

※こちらの地域留学プロジェクトの募集は終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。

●11/28に燻製づくり体験インターンシップが開催されました。
 参加者インタビュー記事はこちら。

三重県尾鷲(おわせ)市、三木浦町(みきうらちょう)。

静かな湾と紀伊半島の深い山々に囲まれた人口550人あまりのこの集落は、マグロなどの遠洋漁業を主に生業としてきた漁村だ。

漁業の衰退と共に少子高齢化が進む三木浦の集落では、今地域主体のまちおこしが盛んだ。

たとえば、毎月第三土曜日に行われる朝市「三木浦こいやぁ」。

地域の住民が主体となって、集落で採れた魚や野菜、天然の椿油、それらを加工した特産品、ちょっとした屋台フードなんかを販売している。

中でも一番の目玉は、目の前の海で養殖されたマダイだ。水槽で悠々と泳ぐ魚を買える朝市とは、何といっても漁村らしく、市外から訪れるお客さんからも毎月評判だそうだ。

三木浦町ではその他にも、県外からの移住者が古民家を改装した宿泊施設をオープンし、にわかに外国人観光客が増えている。また、廃業した喫茶店を受け継ぎ、新しいカフェ兼食堂として営業をスタートした地域おこし協力隊もいる。

三木浦には従来、釣り客やダイビング客、夏場には海水浴客が訪れ小さな賑わいを作っていたが、今ではそれに加えてこのように新たな賑わいが生まれつつある。

 

そんなアクティブな集落では、特産品を作る事業者もまたアクティブだ。

無骨な昭和の漁師町を思わせる佇まいの中に、くんせい屋「マルスイ海産」はある。

マルスイ海産のご主人、三鬼 博樹(みき ひろき)さん。「ウェルカム!」と言わんばかりの朗らかな笑顔が魅力的だ。

あなたは「魚のくんせい」と聞いたら、何を思い浮かべるだろうか?

スモークサーモン?確かにそれが一番馴染みがあるかもしれない。じゃあ、それ以外だったらどんなものが浮かぶだろうか。

普段の食生活に身近かと思いきや、実はそうではない。意外と馴染みがないのが「魚のくんせい」ではないだろうか。

 

三鬼さんの話を聞き、実際にそのくんせいを頂いて、僕は初めてその奥深さと美味しさに気付いた。

あなたにも、ぜひそれに気付いて欲しいと思う。この記事があなたの価値観を動かすことを願う。

 

  • くんせい屋の仕事とは

「くんせいを作る」と言うと、あなたも煙で食品をいぶす光景は頭に浮かぶだろう。

でも、それ以外の工程はどうか?なかなか馴染みがないだろう。そう思って、三鬼さんに尋ねてみた。

「まずは仕入。魚は近場で獲れたものを使う。市内の九鬼港で揚がったものや、マグロなら和歌山県の那智勝浦、三木浦の漁船会社・長久丸が獲った魚なんかを仕入れています。その魚を包丁で捌き、味付けをしてからじっくりと燻します。出来上がったら真空パックしてから煮沸消毒し、出荷販売できる状態にする。これが一連の流れです」

 

この「地元の魚を使う」というのが、三鬼さん何よりのこだわりだ。地域のためになるし、何よりとびきり新鮮な魚を安価に入手できる。

さらに、燻す時に使用する木にもこだわりがある。

 

「くんせいに使う木は、桜かウバメガシ(樫)。そこの山(三木浦の森林組合で管理している山)から切ってきて、枝を15cmくらいの長さに割って燻します。魚も木も地元産ですね。今、大企業がくんせい商品を作る時は、燻液(燻煙を冷やして液体にしたもの)に食材を浸す方法が多くなったけど、うちは今でも木を燃やして食材を燻す昔からのやり方です」

 

―なるほど。このお仕事の楽しさと難しさを簡単に話すと、どうでしょうか。

 

「楽しいのは、やっぱり1から10まで自分でやれることだね。まだ市場に出回っていないもの、今まで自分が作ったことのないものに挑戦するのはすごく楽しい。例えば、オリーブオイル漬けにしたくんせいを作ってみたら今は主力商品になったり、カツオをジャーキーにしたら、普通のカツオのくんせいよりも売れるようになったり。こういうのはすごく面白いです。もちろん失敗もあって、ワインを入れたくんせいを作って食べてみたら、いまいちだった(笑)」

 

「難しさで言うと、やっぱり一つひとつ加減が違うことかな。モノによって燻す時間も違うし、木の状態や時期によって煙の出方も変わってくる。あとは、その日の水揚げによって作れる製品が左右されることとかかな」

主力商品の一つ、サバのくんせい(オリーブオイル入り)。実際に食べるとうまさとボリュームに驚く

―普段はどんなスケジュールでお仕事をしていますか。

 

「他にやってる仕事も含めて言うと…、朝は3時半くらいに起きて、4時半には釣船にお客さんを乗せて、ポイントまで渡して5時には戻ってくる。くんせいに使う時間はまちまちだけど、5時半から7時の間で燻す作業を始めて、お昼にはパック詰めして消毒、というのが一例です。時には食材の味付けで一日中放っておく日もあったり、まちまちですね。これもその日の水揚げで変わるかな」

一日のスケジュールを伺うなり、三鬼さんは机からiPadを持ち出し、操作し始めた。

「ほら、これ。この前お客さんが釣ってきたグレ(メジナ)。よう釣れたやろ」

御年70代という三鬼さんだが、くんせい屋以外にも渡船屋を営み、森林組合の組合長も務めるパワフルさには脱帽する。

「くんせい屋だけで食べていくのは難しい」と前置きをしつつも、こうやって複数の仕事をして食べていくことが田舎ではやりやすいしベターだと教えてくれた。もちろん、釣れた魚をくんせいにする時もあるそうだ。

 

  • くんせい屋の跡継ぎを探す

そんなパワフルな三鬼さんだが、さすがに高齢ということもあり、くんせい屋の事業をやりたい人がいたら受け継いでいきたいと話す。

「やっぱり、仕事は歳いった人がやるよりも、若い人にやってもらった方がいい。田舎で暮らしたいって考える人にはうってつけかもしれないし、よその人なら地元の人らが気付かない魅力を感じてくれるだろう。そんな人には跡を継いで欲しいですね」

 

「正直、この仕事だけで食べていくのは現状だと難しいかも。稼ぐにはとにかく販路を広げることが必要だから、くんせいを作るだけじゃなく、自分で販路開拓や製品のデザイン、マーケティングまで担える人には向いています。この仕事以外にも、渡船を手伝ってくれたり、自分が持っている定置網で漁をやってくれたりすれば、こちらから給料を出しつつ勉強してもらえるかもしれないけど」

 

聞けば、三鬼さんがこのくんせい屋を始めたのは8年前。それまでは趣味の一環として、ドラム缶を使ってくんせいを作っていたそうだ。

今、マルスイ海産のくんせいは三木浦こいやぁで販売するほか、地元の特産品を扱う店舗数社にのみ流通している。売上の拡大には、どうしても販路を広げることが欠かせない。

 

『じゃあ、このくんせいをどこへ売り出すのか?誰が買って食べてくれるのか?他店のくんせいと比べても選んでもらえる魅力や強みは何か?今の販売価格は適正なんだろうか?』

三鬼さんは、こういったことを自ら考えて実行していける人こそベストだと語る。確かにその通りかもしれない。

あなたも一度、マルスイ海産のくんせいを食べてみたら、「自分がやってやろう」と思うかもしれない。

 

  • インターンについて

事業の後継者について考えている三鬼さんは、もちろん職業体験の受け入れにも乗り気だ。

 

「くんせい作りのいい所、面白いところを見せてあげたいね」

と三鬼さん。それなら、マルスイ海産ならではのこだわりである、地元の木材と地元の魚でくんせいを作る工程を一気通貫で体験してもらおうじゃないか。

 

食材を燻すいわば「本番」の工程のみならず、くんせいに使う木や魚の調達、魚の捌き方、パック詰めなど、一連の流れを体験してもらう。

このことで、あなたも「くんせい屋という生業」がどういうものなのか、身に染みて体験できるだろう。

 

田舎で仕事を見つけて暮らしたい人、新たなチャレンジをしたい人はもちろん、単純にくんせいに興味があるといった人でも歓迎だ。

自分の仕事を誇らしげに、楽しそうに話すパワフルな三鬼さんのように田舎暮らしと田舎ビジネスを楽しんでみたいあなたは、ぜひとも一度足を踏み込んでほしい。

マルスイ海産での職業体験は7月から募集を開始する。

 

※こちらの地域留学プロジェクトの募集は終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。

11/28に燻製づくり体験インターンシップが開催されました。
 参加者インタビュー記事はこちら。

 

【お問い合わせ】

おわせ暮らしサポートセンター

TEL:0597-37-4010 (営業時間 9:00~18:00 月曜定休)

Mail:owasegurashi@gmail.com

 

【マルスイ海産 事業概要】

事業者名

マルスイ海産

雇用形態

インターンシップ

仕事内容

くんせい製品の製造・販売
仕入れ、原材料仕込み、木材調達、燻製など

就業地

マルスイ海産作業場(尾鷲市三木浦町)

就業時間

9:00~16:00(予定)

定員数

2名

受入時期

8月以後(日程はご相談ください)

採用計画

事業後継(雇用関係なし 修行⇒事業承継)

 

(文/写真:鈴木教平)