尾鷲市地域おこし協力隊『現地見学会ツアー2019』レポート

2019年8月3日~8月4日の二日間にかけて、おわせ暮らしサポートセンターが主催する現地見学会ツアーが行われました。 この見学会ツアーは、三重県尾鷲(おわせ)市の地域おこし協力隊募集に先立ち、毎年開催されているイベントで […]

2019年8月3日~8月4日の二日間にかけて、おわせ暮らしサポートセンターが主催する現地見学会ツアーが行われました。

この見学会ツアーは、三重県尾鷲(おわせ)市の地域おこし協力隊募集に先立ち、毎年開催されているイベントです。

「尾鷲ってどんな町なんだろう?」「定住移住や早田町の地域おこし協力隊ってどんな活動をするのかな?」といった疑問、「この地域で暮らしていけるかな?」といった不安を、実際に現地を訪れて解消してほしい。協力隊や市の職員、町の方に出会い、話を聞くことで、私たちの活動内容や暮らしを知り興味をもってもらいたい。

そんな想いから、この見学会ツアーが行われています。

今回で5回目となる現地見学会ツアー。
果たして、どのようなイベントになったのでしょうか。

イベントの様子を記事にまとめましたので、是非ご覧ください。


7月の終わりまで続いた梅雨空が一転、透き通るような晴天に恵まれた8月初めの週末。
三重県尾鷲市で現地見学会ツアーが開催された。

集合場所は、JR尾鷲駅。
出身も経歴も異なる参加者が、全国各地から集まった。

「遠路はるばる尾鷲へお越しいただき、ありがとうございます!」

定住移住地域おこし協力隊のメンバーが出迎えてくれた。駅での待ち合わせだったが、中には鉄道を使わず自家用車で来られた参加者の姿もあった。高速道路が整備され、都市圏からおよそ2~3時間ほどでアクセスできる車移動のしやすさも、尾鷲の特徴の一つだ。

旅の話でひとしきり盛り上がると、さっそく最初の目的地へ向かうことになった。



尾鷲駅から車でおよそ5分。

一行は、市の中心地(市街地)にある『おわせ暮らしサポートセンター』に到着した。

築87年になるこの施設は、尾鷲の特産物である「尾鷲ヒノキ」が贅沢に使われており、開放的な室内や庭園、広い駐車場スペースも備えている。しかし、この立派な古民家も、もともとは長らく空き家だった。

当時の定住移住地域おこし協力隊員らは、尾鷲市役所内の間借りしたスペースで空き家バンク業務にあたっていた。だが、土日祝日や17時以降でも気軽に訪れやすく、利用しやすい環境づくりが必要だと考え、この古民家を借り上げ改装。2017年3月に事務所としてオープンした。

今では、空き家バンク運営などの活動拠点として使われる他、イベント・セミナースペースや、地域行事を行う住民たちの集会所としても活用されている。

「こんにちは!おわせ暮らしサポートセンターへようこそ!」定住移住地域おこし協力隊の谷津 健太さんが出迎えてくれた(写真左)。

協力隊2年目の谷津さんは、2018年2月に尾鷲へ移住した。現在は、主に仕事バンクを担当する他、後述するNPO法人の理事でもある。

参加者や関係者らの簡単な自己紹介を済ませた後、さっそく尾鷲という町、定住移住地域おこし協力隊、おわせ暮らしサポートセンターについて紹介していく。

「尾鷲市は、生活利便性の高い市街地と、漁村の地区である9つの漁村集落を擁する人口1万8000人ほどの小さな町です。私たちは、”尾鷲への定住移住を望む人をサポートすること”をミッションに、主に空き家バンク、仕事バンク、移住体験住宅、情報発信の4つを、主な業務内容として活動しています。」

地域おこし協力隊は、一つの町や地域に特化して活動を行うことが一般的だ。

一方で、定住移住地域おこし協力隊は、移住相談窓口として尾鷲市への定住移住促進を業務として行っている。そのため、この尾鷲市内全域が、彼らの活動範囲となるのだという。

「空き家バンクの問い合わせなど、昨年度の相談件数は1,300件を超えました。業務範囲も広く、全てに対応するには人員も必要です。そのため、私たち定住移住協力隊メンバーが集い結成したのが『おわせ暮らしサポートセンター』という団体です。この4人のチームで助け合い、協力しながら活動しています。」

任意団体である同センターは、2018年4月にNPO法人おわせ暮らしサポートセンターを新設した。
NPO法人では、空き家を資源と位置づけ、借り上げた空き家をシェアオフィスや飲食施設、宿泊施設にリノベーションして活用する『空き家利活用事業』や、空き家から出た不用品を集めて販売する『ふるもん市』など、いわゆる収益事業づくりにも取り組んでいる。

「協力隊の任期は、最長3年。私たちが尾鷲に残り続けるためには、任期後の収入源を自分たちで創り出していかなくてはなりません。協力隊業務をこなしつつ、新たな事業を立ち上げていくことは容易ではありませんが、とてもやりがいのある環境だと感じています」と谷津さん。

尾鷲の地域おこし協力隊は、任期後も尾鷲に住み続けてもらうことを条件にせず、特に強制もしていないと説明があった。

「それでも複数の協力隊OB/OGが、尾鷲に残ることを選択しているのは何故ですか」と質問があがった。

「理由の一つに、協力隊制度や市のサポートが手厚いことが挙げられます。ミッションとなる活動以外にも、副業・複業が認められていますし、任期中に起業や事業立ち上げを行うこともできる。地域に根ざした仕事のノウハウを学びながら、将来を見据えた起業をしたいと考える人には、最高の環境だと思います」

定住移住地域おこし協力隊になる方は、空き家バンクで得た知識や自身のスキルを活かし、ゆくゆくは収益事業づくりにチャレンジしていけるということだ。

「これから着任する方は、空き家バンクや移住体験住宅などの運営を通じて、まずは協力隊や町のことを知るところから始めましょう。慣れてきたら、NPO法人の活動にも力を発揮してもらえれば」と谷津さんは話す。



車で山道を走ること、およそ20分。

一行は、次の目的である尾鷲市早田(はいだ)町を訪れた。9つの漁村集落の中で、人口120人ほどの最も小さい町だ。

海に目を向けると、リアス式海岸の入江と、山と海との鮮やかな対比が視界に飛び込んでくる。「うわあ、いい景色ですね!」と、参加者からも感嘆の声があがっていた。

この町でも、地域おこし協力隊の新たな仲間を募集しているという。

住民たちの交流施設として活用されている早田町のコミュニティセンターで、詳しい話を聞くことになった。


早田大敷株式会社 代表の岩本 芳和(よしかず)さんより、まず早田町の産業や課題について話していただいた。

「早田町を支える主要産業は、漁業です。大型定置網を仕掛けて魚を誘い込み、2隻の船で囲い込みながら網を引き上げる。獲れる魚も量もその時までわかりません。大漁の日もあれば、バケツ一杯しか獲れない日もあります」

『限界集落』『一次産業衰退』『担い手不足』『若者離れ』。

全国の地方でよく耳にするネガティヴな問題に、ここ早田町も晒されている。だが、同町は独自のアイデアや取り組みでその問題と向き合っているのだという。

「漁師の高齢化や後継ぎ不足は、この町の深刻な悩みでした。そこで、若い漁師を呼び込むために『早田漁師塾』を始めたんです」

3泊4日の短期体験でスタートした漁師塾だが、実際に町で暮らし、より町の文化や漁業、漁師のことを知ってもらいたいと、1ヶ月間の本格的な長期実習の形に舵を切った。この漁師塾の取り組みが功を奏し、毎年1~2名の若い人材の採用に繋がっているという。

「周辺地区での漁師の平均年齢が65歳前後と言われる中、早田町の漁師は、年齢層が30代〜40代前半と圧倒的に若い。若い力で町の課題を解決していければ」と話す岩本さんの表情は明るい。

続いて、早田町地域おこし協力隊2年目の大山 道臣(みちおみ)さんより、協力隊のミッションや活動内容ついて紹介していく。

「早田町の協力隊ミッションは、”早田町で獲れる新鮮で美味しい魚をより多くの人の食卓に届ける”こと。具体的には、早田漁協であがった魚を仕入れて販売しています」と大山さん。

販売方法もユニークだ。

1つ目に、魚の通信販売『うみまかせ』。朝どれのとびきり新鮮な魚を直送するため、味は折り紙付き。どんな魚が送られてくるかは、届いてからのお楽しみだ。網を引き上げるまで魚種も量も”海まかせ”である定置網漁の悩みを逆手に取った。消費者は、旬の新鮮な海の幸を、季節ごとに堪能できる。

2つ目に、『鮮魚販売』。週に一回、松坂市や津市まで冷凍車で輸送し、鮮魚の移動販売会を行う。早田町の魚を心待ちにしているファンも多く、毎回行列ができるほど盛況なのだとか。早田町産の鮮魚・うみまかせのPRや販路拡大も視野に入れている。

3つ目に、『魚捌き会』。鮮魚販売では、単に魚をそのまま持ってくだけでなく、魚捌きを実演するパフォーマンスも行っている。都市部の人は、そもそも魚を捌く機会が少ない。こうしたデモンストレーションや体験を挟むことで、より魚を身近に感じてもらえるのだという。

「朝にあがった魚をその日にいただく。何より贅沢な、この「当たり前」の文化と魅力を、鮮魚販売などを通じて発信しています」

大山さんは、地域の雇用創出を目的に設立された『合同会社き・よ・り』のメンバーでもある。

き・よ・りの事業拡大によって、漁師の奥さんなど町の女性が働ける場をつくり、女性たちのコミュニティを守っていくこともミッションのひとつだ。早田町の内外から、町を盛り上げようと奮闘している。

一方で、課題もある。

「夏から秋にかけて(7月後半〜10月前半頃まで)、早田町の定置網漁は休漁になるんです。町から魚が手に入らなくなる、この時期をどうするか」

「安定した魚を確保するため、鮮魚の保存(急速冷凍)や、養殖魚の仕入れなどを検討しています。他にも、獣害で手付かずの耕作放棄地の活用案を考えたり、町に滞在できる民泊施設の設置を進めたり。やることは山積みです」と笑い飛ばす。

もし早田町の協力隊として来てくれる人がいたら、どんな活動をしてもらうのだろう。

「き・よ・りの事業拡大や休漁期の活用案など、色々と手伝って欲しいことはありますが、それに縛られて欲しくはないので。まずは町での暮らしに慣れてもらい、どんなことができるか、自由な発想で出たアイデアを形にしていただければと思います。全力でサポートしますよ」

続いて、コミュニティセンター1階の作業場へ。

ここで、大山さんが魚捌きの実演をしてくれるという。この日のために用意された、丸々と太ったブリと真鯛を捌いていく。

「捌くときは、集中して無口になってしまうんです」と少し照れながらも、慣れた手つきで、魚の身に包丁が入れられていく。

早田町に移住して1年半。今では魚捌きもお手の物だが、移住当初は綺麗に捌けるようになるまで苦労したそう。「繁忙期は8kgくらいのブリを、1日に5本くらい捌きます。何事も慣れ、経験ですね」

新しく着任する人も、この魚捌きが身に付くことになるのだろう。

瞬く間に三枚におろされた。鮮やかな手さばきに、自然と参加者からの拍手がおこった。

協力隊同士のコラボレーション事例もある。

定住移住地域おこし協力隊らが整備した短期型移住体験住宅『漁村暮らしの宿 三木浦ソワイ』では、ふるさと納税宿泊者限定プランとして、出張で魚捌き体験会も行っている。

「明日も予約が入っています。宿泊者に喜んでもらえたら嬉しいですね」と話す大山さんは、どこか楽しそうだった。



一行は、再びおわせ暮らしサポートセンターへ移動した。

この日の夕食は、尾鷲の新鮮な海・山の幸を集めた豪華な懇親会バーベーキューとなった。

鮮度抜群な真鯛・ブリの刺身と炙り、炭火で焼き上げたタイカマ、ブリカマ、焼肉やホルモンなど、懇親会バーベキューならではの料理の数々が次々と運ばれてくる。

焼きたての魚を頬張った参加者たちは「こんな美味しいカマ、初めて食べました!」「毎日こんな食事が食べられたら幸せですね!」とその旨さに感激していた。

「まだまだ沢山ありますので。どうぞお召し上がりください」

バーベキューを担当した定住移住地域おこし協力隊2年目の郷橋正成さん。釣りが趣味で、よく職場の仲間と海釣りに出かけるのだという。

「協力隊同士仲が良いんです。釣り好きなメンバーと、よくこうしてサポセン(事務所の略称)に集まって、魚会やバーベキューをしています。僕らなりの歓迎会ですね」と話す。

この日の懇親会には、尾鷲市内で活躍する協力隊やそのOBも駆けつけてくれた。

尾鷲市梶賀町地域おこし協力隊OBの浅田克哉さん。デザイナーの経歴を活かし、人口150人ほどの梶賀町で、郷土食『梶賀のあぶり』のリブランディングを行った。任期満了後も尾鷲に残り、デザイナーとして活動している。

尾鷲市三木里町地域おこし協力隊の藤井友美さんは、海水浴やキャンプが楽しめる三木里海岸を有する、人口500人ほどの三木里町で活動されている。更なる観光客の誘致と地域活性化をミッションとして、現在はキッチンカーを使った海の家事業に取り組んでいる。

早田町漁協組合に勤める湯浅光太さんも、早田町の『魚捌き実演会』で捌かれた魚を刺身にして駆けつけてくれた。

尾鷲出身の湯浅さんは話す。「僕らの町って、田舎で何にもないところに映るかもしれない。でも、一度尾鷲を離れてみると、とても住みやすい町だったんやなと気づいたんです。子供を育てるには、とても良い環境やと思います」

これから協力隊を目指す人の中には、家族や子ども連れで移住になる人もいるだろう。都会から離れて不便な田舎でやっていけるのか、子育てができるのか、不安に思うかもしれない。

だが、協力隊の周りには、こうした先輩住民らがいる。移住先で、親身に相談にのってくれる人がいる環境は、きっと心強く感じることだろう。

他にも、尾鷲や協力隊に縁のある住民やゲストたちが集まった。

美味しい料理に舌鼓を打ち、互いに酒を酌み交わす。懇親会参加者たちの表情は次第にほころび、自然と打ち解けていく。

仕事のこと、暮らしのこと、尾鷲のこと。それぞれの体験談やざっくばらんな裏話に花が咲き、話題は尽きない。終始、賑やかな懇親会となった。



1日目最後のプログラムは、おわせ港まつりの見学だ。

一行は、おわせ暮らしサポートセンターから徒歩5分ほどの尾鷲港に向かった。

会場には、所狭しと露店が立ち並び、すでに沢山の人集りができていた。普段の町の雰囲気とは異なる、賑やかな熱気に包まれた夜の尾鷲に、参加者たちも「すごく活気があるなあ!」「尾鷲ってこんなに若者がいるんですね!」と驚きを隠せない様子だ。

おわせ港まつりは、昭和25年から続く、尾鷲の伝統的な祭り。
毎年8月第一土曜日に開催されるこの祭りは、新鮮な食材や特産品が並ぶ「尾鷲イタダキ市」をはじめ、伝統芸能「尾鷲節」やフラダンスの披露、カッター(手漕ぎボート)大会、魚のつかみ取りなど様々な催しが行われる。恒例の花火大会では、地元住民やお盆の帰省客、観光客らで大いに賑わう。

訪れたのは、ちょうど花火が打ち上がる時間帯だった。


周囲を山で囲まれた地形による反響音と、観覧席間近で打ち上がる花火。フィナーレでは、海面近くで爆発する水上爆発も見られた。

「都会の花火よりもすごい!」「1発ごとに身体が揺れますね!」想像以上の迫力に、参加者たちも大いに楽しんでいたようだった。

 

花火見学から戻ったあとも、懇親会は続く。

多数の個性豊かな協力隊員が活躍するのも、尾鷲市の特徴の一つだ。参加者にとって、尾鷲の協力隊とはどういうものなのかを知る良い機会となっただろう。

この日は、夜遅くまで盛り上がっていた。



現地見学会ツアー2日目。
早朝から定住移住地域おこし協力隊メンバーが集まると、さっそく朝食作りが開始された。

梶賀町のあぶりや、ブリの身とアラで作った味噌汁、昨日湯浅さんが仕込んだ自慢の「なめろう」が食卓に並んだ。漁師町・尾鷲ならではの朝食だ。


参加者たちも「絶品ですね」「ご飯が何杯でも食べられそう」と魚づくしの朝食に舌鼓を打っていた。

食後には、谷津さん自ら焙煎したモーニング珈琲が振る舞われた。珈琲焙煎が趣味で、地域イベントに珈琲スタンドで出店することもあるのだとか。

「朝からこんなゆっくり贅沢な時間を味わうことができるなんて。素敵な朝食ですね」

参加者の一人が、そう話していたのが印象的だった。

「協力隊には、個々の持ち味を活かすことのできる”余白”があるんです。この見学会のプログラムも私たちで企画したんですよ。ミッションや活動の方向性にあっていれば、新しい取り組みにもどんどんチャレンジできます」と谷津さんは話す。



続いて、一行は、尾鷲市街地にある空き家を訪れた。

ここで、空き家の現地調査体験を行うのだという。

「定住移住協力隊は、空き家バンク運営など、普段から空き家に関わる機会が多いんです。僕らの空き家バンク業務の一端や雰囲気を少しでもお伝えしたくて。」そう意気込むのは、協力隊3年目の中尾拓哉さん。

所有者からの依頼で、空き家物件を空き家バンクに登録する際に実施する業務が空き家現地調査だ。ホームページ掲載に先立ち、実際に現地を訪れ、写真を撮ったり、間取りを描いたり、物件の特徴や設備など、物件の現場を詳しく調査する。

参加者には、間取り図の作成と、気づいたことをメモしてもらうことになった。

初めての作業に苦労しながらも、間取り図を描いていく参加者たち。それぞれ気づいた物件の特徴もチェックしていく。

実は、このどれもが正解なのだとか。

「空き家調査では、正確な間取り図を描くことは大切ですが、例えば天井に雨漏りがある、床板がゆるい、配電盤が古い、といった傷み具合から修繕の度合いを測ったり、物件まで車が通れるか、近くに月極め駐車場はあるかなどの周辺の住環境も含めて、現地でしか得られない情報を把握しておくことも重要なんです」

「所有者以上に空き家物件に詳しくなっておけば、遠方からお越しいただく利用者にも、前もってお勧め物件をご提案できますからね」と中尾さんは話す。

尾鷲市の空き家バンク制度は、平成26年度からスタートした。開始から6年で、空き家登録物件数は累計※228件、成約物件数は131件にも上る(※2019年7月末時点)。

全国でもトップクラスの実績を支えるのは、空き家バンク説明会開催やポスティングなど、空き家バンク登録を促し、1件でも多くの空き家を掲載するための地道な活動を継続してきたことが大きい。

「着任当初は、不動産や法律の知識は全くありませんでした。空き家バンク業務をやりながら、少しづつ覚えていった感じですね。自分たちで空き家を取得したり修繕するときは、旅館業法や飲食店営業許可についても調べたり。まあ、何とかなりますよ。笑」

空き家調査では天井裏を調べることが日課になっているという中尾さん。本人のやる気次第で、いくらでも学んでいける環境がありそうだ。



2日間の現地見学会ツアーも、いよいよ終わり。

ここで、尾鷲市役所 政策調整課の野田 憲市(けんいち)さんより、地域おこし協力隊募集についての説明があった。

「尾鷲は人が宝やと思っております。面白い人材がいなくなれば、町も面白くなくなる。なので、協力隊がのびのびと活躍できるよう、役所もしっかりとサポートさせてもらいます。困ったこと、わからないことがあれば、何でも相談して。笑」

早田町をはじめ、三木里町、三木浦町など、着任する地区によっては一人で活動を行う協力隊もいる。そうした隊員が孤立しないよう、月一回の定例会を設けて活動方針を話し合ったり、SNSでの情報交換も頻繁に行っている。市と協力隊は、横の繋がりも強い。

「一方で、これから協力隊になる人は”尾鷲という町に入って暮らす”という認識を持ってほしい。役所と協力隊は、お互いの信頼関係がないと成り立たないし、地域住民とのコミュニケーションや信頼関係は言うまでもありません。その点を噛み砕いて、自分の活動の指針にしてもらえたら」と野田さんは話す。

これまでに着任した尾鷲の協力隊員は10名以上もいるが、その志望理由に”親身になって対応してくれる行政の存在”を挙げた隊員も多い。ミッション以外のことも「やれい!」と背中を押してくれる環境が、尾鷲にはある。

「きっかけは何でもええんです。自分がやれそうだと感じたら、ぜひ応募して」



最後に、見学会参加者の感想を一部ご紹介します。

「現協力隊の方々に気軽に質問したり答えてもらえて、とても参考になりました」

「実際に尾鷲に足を運び、目で見ることができて良かったです。活動されている方の話を聞き、体験し、自分の働いている姿をイメージできました」

「自然が豊かで、市街地は生活の利便性が高く問題がないこと。協力隊や市役所の方々が親切で面白いことが実感できました」

「尾鷲に移住する人の目線で、魅力、課題など具体的にイメージできました。空き家現地調査が特に良かったです」

この見学会が、参加された方の新たな交流のきっかけになったり、将来の尾鷲暮らしを考えるきっかけになれたのなら、とても嬉しい。

ここで生まれたご縁が、それぞれの未来につながっていきますように。

 

この記事は、当日の都合が合わず見学会に参加できなかった方々にも、尾鷲や協力隊の魅力を届けたいと思い、書かせていただきました。

尾鷲に興味が出た方は、是非尾鷲に足を運んでみてはいかかでしょうか?

 

(文/写真:谷津健太)

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